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会計検査院一職員のメモ辻敬一の時代>業績検査の取組


業績検査の取組

 業績検査は performance audit の和訳であり、会計検査の世界では、経済性(economy)・効率性(efficiency)・有効性(effectiveness)の検査を指し、頭文字をとって3E検査とも言われる。  もともと、日本の会計検査院は破綻し掛けていた財政を背景に明治13年に設立されており、そのような出自を持つ他国の会計検査院と同様に「無駄遣い」を指摘することを最大の仕事としてきた。したがって、論者によっては第2次大戦前の会計検査院の仕事に有効性検査の姿を見るものも居る。しかし、一般的には、日本の会計検査院が有効性検査を始めたのは、戦後の不当事項の指摘が一段落し、「検査の曲がり角」が議論されて会計検査院法第34条・36条の積極的行使が開始された昭和37年の事案「国営農業水利事業とこれに付帯する都道府県営および団体営補助事業の施行計画について改善の意見を表示したもの」であるとされている。そして、これ以降、有効性検査は充実したものとなり、一方、効率性検査も昭和46年の「鉄道新線の建設について意見を表示したもの」を典型例として発展してきた。このような有効性・効率性の検査は、特に昭和51年の「特に掲記を要すると認めた事項」の新設で更に大きく進展することになる。このように日本の会計検査院の場合は、経済性の検査で始まり、その自然な延長上に有効性の検査・効率性の検査が位置付けられた。  一方、経済性の検査から始まらなかった会計検査院、すなわち、例えば証憑検査(voucher audit)から出発したアメリカ会計検査院などは、戦争などで財政が窮乏化すると、非連続的に3E検査を求められることになる。そこで、それまでの検査とは異質なものとして「業績検査」が語られることになる。したがって、そういう国で言う業績検査と日本の会計検査院が語る業績検査は、もともと異質な面を有している。  以上を前提としておく必要はあるが、日本の会計検査院が業績検査について語り始めたのは、この時代であり、「業績検査」が国会会議録に始めて登場するのは昭和63年9月6日の衆議院決算委員会における次の答弁である。そこでは、「業績検査」が「事業が本当に経済的、効率的に行われているかどうか、あるいは事業が本来の目的を達しているかどうかという点」に重点を置いた検査、として語られている。
○辻会計検査院長 会計検査院といたしまして、最近、事業が本当に経済的、効率的に行われているかどうか、あるいは事業が本来の目的を達しているかどうかという点にも重点を置いて検査を進めているところでございます。このようないわゆる業績検査を進めるに当たりまして、新しい検査手法を開発することが必要になってまいります。そこで、ただいま委員の御指摘になりましたような研究会を設けまして、学識経験者十名の方の御参加をいただいて業績評価手法の研究を進めているところでございます。既に総論の段階を終わりまして、ただいま各論の段階の検討をいたしております。  今後とも、公共事業あるいはいろいろなプロジェクトの検査に当たりまして、この研究の成果を活用して、検査の一層の充実を図っていきたいと考えているところでございます。
 そして、この答弁で語られる研究会の名称が会計検査問題研究会であること、その発足が昭和61年であることが平成9年9月4日の参議院決算委員会における次の答弁で明らかにされている。
○会計検査院長(疋田周朗君) 昭和六十一年から外部の学識経験者から成る会計検査問題研究会というものを発足させまして、その研究成果を業績検査に関する研究報告書として取りまとめていただいておりますほかに、この報告を受けまして、さらに諸外国の会計検査院における業績検査の制度、手法などにつきまして、外部のシンクタンクも活用しながら引き続き調査研究を続けているところでございます。