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会計検査院一職員のメモ>辻敬一の時代>広報
広報
往事、会計検査院は、裁判官は判決をして語らしめるべきで、判決外では語るべからず、とされているのと同様に、検査報告をして語らしめ、検査報告のほかには語ってはならない、という風土があった。特に戦前においては、国会で検査報告を説明する機会すら与えられておらず、せっかくの検査報告が実効を確保できないことも生じていた。主権在民となった日本国憲法下の会計検査院法では、国会において出席することの定め(第30条 会計検査院は、前条の検査報告に関し、国会に出席して説明することを必要と認めるときは、検査官をして出席せしめ又は書面でこれを説明することができる。)は置かれたものの、その規定は検査報告についての説明にとどまっており、自らの活動について対外的に説明を行うという姿勢はなかった。
しかし、この時期に大きな転換が行われた。例えば広報体制が強化されており、昭和61年10月には広報体制強化の検討を行っていることが昭和61年10月17日の参議院決算委員会における次の答弁で示されている。
○説明員(秋本勝彦君) ……。
それから、体制面でございますが、渉外あるいは広報室を設置するべく準備を進めておりまして、これはいつできるかということでございますが、現在その卵と申しますか、核となるものは既に総務課の中に渉外広報係というのがございます。これをさらに強化するということでございまして、予算の関係もございますけれども、早い機会に広報室というように格上げして、大いに広報に努めていきたいというふうに考えております。
そして、渉外広報室が昭和62年に設置されたことが、平成5年5月20日の衆議院本会議における次の答弁で明らかにされている。
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) ……。
会計検査院では、会計検査院の機能、活動状況、活動成果等についての広報の重要性を認識し、昭和六十二年に渉外広報室を設置し、国民に周知されるためのさまざまな活動を行っており、納税者からは、国の会計経理に関して多く情報の提供が寄せられております。検査においては、常にこれを活用することを心がけておられることと認識しております。今後も、さらに一層納税者からの情報を活用する効果的な方法を検討していかれることを期待いたしております。