検査に当たっては、国会における審議の状況に常に留意する。また、国会の要請に係る事項の検査においては、国会における審査又は調査の必要から要請がなされることに十分留意する。もともと、監査というものは監査報告作成のために行われるものであり、会計検査院の検査報告がすべて直接に又は間接に国会へ提出されるものである以上、会計検査院の検査活動が国会、特に国会による財政統制を離れてはあり得ないことは当然であり、それを前提とした上で、さらに「国会との連携」という項を起こしていることに意味がある。この背景には、会計検査院に対して国会、特に参議院決算委員会が示した強い期待がある。17年に参議院の決算委員会は予算・決算のPDS(PDCA)サイクルを確立するために決算審査の充実を図る一環として会計検査院に対して二つの大きなアクションを行った。その一つは、17年6月に参議院決算委員会が国会法第105条に基づく検査要請を9件も行ったことである。その内容も、15年度決算審査を踏まえて政府及び会計検査院に対して行った決算審査措置要求決議を踏まえてのものであり、予算・決算サイクルの確立を図るものであった。そして、今一つは、会計検査院法改正である。参議院サイトは「参議院改革の歴史」の「扇議長の下での動き(平成16年〜)」に「決算審査充実のための会計検査院法改正とODA特別委員会の設置」の項を置き、そこで会計検査院法改正について次のように説明している。
平成17年8月、改革協議会は、決算委員会が取りまとめた会計検査院法改正案を了承し、その旨を議長に報告した。同年10月、同法改正案が成立し、国等の締結する契約の多様化を踏まえた検査対象の拡大、会計検査の円滑な実施の担保、会計検査院による国会等への報告時期の弾力化が実現するところとなった。平成18年7月には会計検査院から国会及び内閣に対し初めての随時報告が行われ、同年11月には、平成17年度決算の提出に先立ち、決算委員会において会計検査院からの報告聴取と質疑が行われた。
決算委員会、会計検査院の報告を審査 H18.11.15参議院決算委員会では、平成17年6月の平成15年度決算の議決時に、決算委員会として初めて会計検査院に対し検査要請(9項目)を行いましたが、その結果報告が昨秋の2項目に引き続き今般7項目について国会に提出されたことから、その審査のため、平成18年11月15日(水)、委員会を開会しました。
また、平成17年10月に同委員会が提出し成立した会計検査院法改正案によって導入された会計検査結果の随時報告が、初めて国会に提出されたことから、併せて審査を行いました。
委員会では、特別会計の状況、中心市街地活性化プロジェクトの実施状況等に関する検査要請に対する結果報告と、関西国際空港の経営改善等に関する随時報告について、大塚会計検査院長から説明を聴取し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党、社会民主党・護憲連合が質疑を行いました。
本院では、広島、兵庫両労働局の不正経理を念頭に置き、17年次及び18年次の2箇年にわたり、都道府県労働局の会計経理について重点的な検査を行った。その結果、25労働局において、庁費、謝金、旅費等を不正に支出するなどしており、そのうち16労働局では、不正支出等によりねん出した資金を別途に経理するなどしていた。また、物品の購入等に当たり、虚偽の内容の関係書類を作成するなどの事実と異なる不適正な会計処理を行い、庁費等を支出していた事態は、47労働局のすべてで見受けられた。さらに、超過勤務手当の不適正支給の事態、求人情報自己検索システムの取得等に当たり会計法令に違反して契約の締結及び経費の支払をしていた事態、競争入札の実施を偽装して契約を締結していた事態などが見受けられた。協議会に対する委託費についても、協議会事務局が設置された労働局において委託費を不正に支払い、別途に経理するなどしていた事態が見受けられた。このうち、47労働局すべてで見受けられた事態(不当事項第19号ないし65号「物品の購入等に当たり、契約した物品が納入されていないのに納入されたこととして虚偽の内容の関係書類を作成するなどの不適正な会計経理を行い、庁費等を支出していたもの」)については、「預け金」(不実の契約で支出した金を業者に預け、後日これを利用して契約とは異なる物品を納入させる。)、「一括払い」(随時、物品を納入させた後、不実の契約により購入代金を一括して支払う。)、「差替」(契約した物品とは異なる別の物品に差し替えて納入させる。)、「先払い」(契約した物品が納入される前に、これらが納入されたこととし、関係書類に虚偽の検収日付を記載するなどし、庁費等を支出する。)という手口があったことを報告している。
労働局では、会計法令及び基本的な会計事務手続等を遵守し、もって適正な会計経理の規律を確保することの重要性が十分認識されておらず、従前からの違法又は不正な会計経理が慣行的に行われていた。本院では、労働局の会計経理の適正化、規律の確保の状況等を注視しつつ、会計経理を監督し、その是正を図り、もって不正な会計経理等の根絶を図るなどの使命を果たすべく、引き続き厳正に検査を実施していくこととする。