しかし、これらの業務の実施状況をみると、振興会は、いずれも業務の実施に必要な施設、設備等を保有しておらず、〔2〕のうちの編集業務を除く大半の業務を再委託先に実施させて、自らは再委託先との連絡調整、監督等の業務を行っている程度であった。そして、上記〔1〕、〔2〕及び〔3〕について、振興会が再委託先に実際に支払った額についてみると、次表のとおり、学園が振興会に対して支払った額(〔2〕については編集業務に要する額を除いた額)の、いずれも約90%となっていた。
また、これらの業務は、いずれもその実施状況等からみて、特殊な技術等を要するものではなく、当該業務の実施に必要な仕様書を整備するなどすれば、振興会でなくても実施できるものであると認められた。
上記のように、受託業務の大半を再委託先に実施させていて当該業務の履行能力が十分でないにもかかわらず、契約の性質又は目的が競争を許さない場合に該当するとして振興会と随意契約を締結している事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。
これらの契約は、国立国会図書館の庁舎等の清掃作業、警備業務等の役務を調達するものである。国立国会図書館では、これらの役務調達契約につき、数年ごとに競争に付していたものの、それ以外の年度においては、次の理由により契約の性質又は目的が競争を許さない場合に該当するとして、直近の競争に付した際の落札者を相手方とする随意契約によっていた。また、後者は次のような指摘である。
(ア)国立国会図書館は、不特定多数の利用者が訪れる大規模な公共施設であることから、契約相手方は、同種公共施設の設備等に関して十分な知識・技術等を有する作業員を常に配置できること、実績に裏付けられた高い信頼性を有する業者であることなどが必要である。しかし、次のようなことから上記の理由は妥当性を欠いており、随意契約によったことは適切ではなかったと認められた。
(イ)上記の要件をすべて満たし、業務を支障なく実施し得る業者は直近の競争に付した際の落札者以外にない。
(ア)これらの役務は、仕様書の内容や作業の実態からみて、大規模な施設・設備に固有の特殊な技術を要するものではなく、一般的な庁舎の維持管理に関するものであり、当該業者でなくても履行できる業務となっている。
(イ)業者の信頼性については、入札参加者の資格審査に当たり当該業務の履行に求められている要件を満たしているかどうかの審査を行うことで、履行する能力のない者の競争参加を防ぐことができる。そして、実際にも、競争に付した際には、複数の業者が過去の業務実績などの入札参加の条件について資格審査を受け入札に参加していた。
これらの契約は、事務用回転椅子、平机等の物品を調達するものである。国立国会図書館では、これらの物品調達契約につき、当初、一般競争に付して調達を行ったが、その後、当該年度又は翌年度に同一の仕様の物品を追加して調達するに当たり、次の理由により競争に付することが不利と認められる場合に該当するとして、当初の一般競争に付した際の落札者を相手方とする随意契約によっていた。(ア)既に納入されている物品と仕様の統一を図る必要がある。しかし、次のようなことから上記の理由は妥当性を欠いており、随意契約によったことは適切ではなかったと認められた。
(イ)追加して調達する数量は一般競争に付した際の数量と比較して少量であり、このように調達数量が減少する場合には単価が上昇するのが一般的であるにもかかわらず、一般競争に付した際の落札者は当初の調達における価格と同一の単価で見積書を提示してきており、その価格により調達することが経済的に最も優れている。(ア)これらの物品は、職員が日常的に業務で使用する回転椅子、平机など一般に市販されている事務用品であることから、他の業者であっても既に納入されている物品と同一仕様の物品を納入することは可能である。そして、一般競争に付した際も、仕様書において規格基準等を示していて仕様が特定されているが、複数の業者が入札に参加していた。
(イ)一般競争に付した際の落札者が当初の調達における価格と同一の単価で見積書を提出したからといって、追加して調達する時点において最も有利な条件になっているとは限らない。
貴省では、外国からの要人等の送迎等のために使用する目的で新東京国際空港内に分室を設け、その清掃管理業務を清掃業者に委託している。この委託業務を担当する官房総務課では、夜間、緊急時等の対応が可能なA社が最も信頼のおける業者であるとして、従前から継続して同社のみから見積書を徴していた。そして、会計課ではこれに基づき、同社との間で随意契約(11、12両年度、契約額いずれも1,590,996円)を締結していた。すなわち、競争の可能性を検査対象機関に検討させ、見積もりを取らせて見たら、見積もりを提出する会社がほかにもあったということである。「昨年次」とあることから2年継続しての検査であることを示している。同様に(2)は次のように指摘している。
しかし、本件業務の内容は主として室内清掃であり、同空港内において同種の業務が複数の会社により実施されていることから、昨年次の貴省会計実地検査の際に、契約の相手方を特定の業者に限定する必要性について貴省の検討を求めた。
これに対し、貴省では、13年度の契約に当たり同社を含め4社から見積書を徴したところ、同社が930,000円と他の3社と比べ最も低い価格を提示したことから、この額を契約額として同社と契約を締結した。この結果、66万余円が節減されることとなった。
貴省では、外交貨物の梱包業務及び船舶による輸送等業務と、航空機による輸送等業務をそれぞれ運送業者に委託している。これらの委託業務を担当する在外公館課では、当該貨物が秘密を保持する取扱いを要するものであるとして、B社を契約の相手方に選定していた。そして、会計課ではこれに基づき、同社との間で単価契約を締結していた。すなわち、競争が可能なものを分離させることによる競争化の改善である。同様に(3)は次のように指摘している。
しかし、船舶、航空機による輸送については、契約上及び実際にも他の荷主の貨物と一緒に運送するいわゆる「積合せ貨物」であって特に秘密を保持する取扱いとなっていないことから、昨年次の貴省会計実地検査の際に、契約の相手方を特定の業者に限定する必要性について貴省の検討を求めた。
これに対し、貴省では、13年度の契約に当たり梱包業務を除いた輸送等業務を一般競争契約により調達することとした。そして、12年度とほぼ同一の単価に13年度の発送見込数量を乗ずるなどして予定価格を算定したところ、船舶による輸送については6952万余円、航空機による輸送については4億2730万余円となった。入札の結果、いずれもB社以外の他社が落札し、落札額はそれぞれ1694万余円、2億4543万余円で、予定価格をそれぞれ5258万余円、1億8186万余円下回り、調達に要する経費が大幅に節減されることとなった。
貴省では、在外公館で広報活動に使用する文房具等の頒布品を購入している。この業務を担当する海外広報課では、在外公館からの要求を基に品目を選定し、特定の4業者に発注していた。そして、会計課では、これらの業者との間で12年度に515件の随意契約を調達額計4億6573万余円で締結していた。すなわち、分割発注による事務簡素化よりも契約統合による競争化の方が望ましいのではないかという指摘である。
上記515件の随意契約のうち513件は、調達額が100万円以下(うち164件は98万円以上100万円未満)のものであり、「随意契約による場合の予定価格等について」(昭和44年蔵計第4438号)により、予定価格調書の作成を省略していた。
そして、この513件の調達についてみると、同じ日に同一業者から複数調達しているものが、年間47回にわたり502件、調達額計4億5304万余円見受けられた。このうちC社からの調達を例にすると、同じ日に、ほぼ同一の物品について55件(調達額計5166万余円)の契約に分割して調達しているものがあった。これらは、それぞれ複数の在外公館分をまとめて1件の契約としているが、輸送方法その他の必要性により55件に分割しているものではなく、分割調達する合理的な理由は認められなかった。また、それ以外の447件についてもほぼ同様の事態となっていた。
したがって、これらの502件の調達契約を適宜取りまとめても何ら問題はなく、一括して競争に付すべきであると認められた。