昔から、特別会計の問題については検査報告で取り上げてきている。昭和20年代から30年代前半までの検査報告では、講学上「概説留意事項」とも称されるものが一部の特別会計について記載されている。例えば、昭和29年度決算検査報告では、
厚生保険特別会計、
国立病院特別会計、
食糧管理特別会計、
国有林野事業特別会計、
アルコール専売事業特別会計、
輸出保険特別会計、
中小企業信用保険特別会計、
郵政事業特別会計、
郵便貯金特別会計、
簡易生命保険及郵便年金特別会計、
労働者災害補償保険特別会計及び
失業保険特別会計について言及がある。
昭和50年度決算検査報告では「特に掲記を要すると認めた事項」という報告枠が新設されたが、この前後でも特別会計について報告がある。まず、昭和49年度決算検査報告では、「
厚生保険特別会計について」、「
食糧管理特別会計について」、「国有林野事業特別会計について」及び「
郵政事業特別会計について」、財務の問題を取り上げて注意を喚起しているが、これらの問題意識は、次の50年度決算検査報告では「特に掲記を要すると認めた事項」として次のように報告されている。
また、平成10年度決算検査報告では、「
歳入歳出決算等の検査対象別の概要は第2節に記述するとおりであるが、国の会計等のより的確な理解に資するために、今後、これらの決算状況等を個別に取り上げることにした。」として「交付税及び譲与税配付金特別会計の決算の状況」を記載しており、
以降の年度でも特別会計の決算をいろいろと取り上げている。
さらに、平成2年度決算検査報告で新設された「特定検査対象に関する検査状況」の報告枠で特別会計について報告したものとして、13年度決算検査報告の「
電源開発促進対策特別会計電源立地勘定の決算状況について」、14年度決算検査報告の「
石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計石油及びエネルギー需給構造高度化勘定の決算状況について」があるほか、13年度決算検査報告では
特別会計を横断的に取り上げて比較検討したレポート「
特別会計の決算分析について」(
[別添]個別の特別会計の状況)を報告している。このレポートを踏まえて、17年6月には参議院決算委員会で、国家財政の経理及び国有財産の管理に関する調査のため、会計検査院に対し、特別会計の状況について会計検査を行い、その結果を報告するよう要請することが決定されて参議院議長から検査要請があり、これを応諾した会計検査院は「
特別会計の状況に関する会計検査の結果について」(
PDF版(5,921KB))の報告書を18年10月に提出している。その所見は次のとおりである。
各府省が所管する特別会計について、参議院からの検査要請に基づき、財務等の情報に関する透明性、多額な繰越額・不用額、決算剰余金の状況、積立金等の残高の状況、予算の執行状況、特に予算積算との対比及び出資法人への出資の状況に関し、財政統制の面に着眼して検査した。
これらの検査結果は、上記第2の各項に記述したとおりであるが、本報告で特別会計の課題として示した事項については、政府においても、現在、特別会計に係る事務事業の合理化及び効率化を図り、国民への説明責任を十分に果たせるようにするとともに、財政の健全化に向けた特別会計改革への取組を行っている。
特別会計は、一般会計とともにその財政活動を通して国民生活に大きな影響を及ぼしており、今後に予定されている統合等を経て特別会計が一新されたとしても、その財政活動に期待される基本的な役割は変わらないと考えられる。
したがって、一般会計の厳しい財政の現状にかんがみ、各特別会計の今後の財政運営に当たっては、特別会計を所管している各府省において、次のような点に留意して見直しを進めるとともに、政府一体として、行政改革推進法等の趣旨に沿い、財政状況の一覧性の確保、剰余金及び積立金の縮減等現在行っている特別会計の改革を着実に実施し、各特別会計における財政統制をより実効あるものにしていくことが重要である。
ア 一般会計からの繰入金や特定財源、繰越額・不用額、決算剰余金や積立金等、出資法人に対する出資等について、更に分かりやすい情報提供に努め、各特別会計の透明性の向上を図ること
イ 予算の執行状況や決算の精査、分析を一層徹底し、その結果を的確に予算に反映させること
ウ 決算剰余金及び積立金等の内容や残高に留意し、各特別会計やその財源の性格、事業に対する需要の動向等からみて可能な場合は、下記の方策等を講ずることにより、一般会計への繰入れも含めてその有効活用を図るなどの検討を行うこと
(ア)決算剰余金の一般会計への繰入れ等に必要な規定の整備を図ること
(イ)積立金等の適正な保有規模について検討すること
エ 事務事業の適切な管理を図り、歳出の合理化に向けた予算執行管理を徹底すること
オ 出資法人に対して、新規事業の採択の適正性、財務状況等について常に注視するなど出資者として適切な管理を行うこと
会計検査院としては、上記の各項を含む特別会計全体の見直しに関する進展を注視するとともに、各特別会計における財政統制の状況について、今後とも多角的な観点から検査を実施していくこととする。