新山村振興等農林漁業特別対策事業等により整備した直売所等の施設について、適切な評価指標等を含めて事業効果を評価していなかったり、事業効果の発現状況を継続して把握できる仕組みが構築されていなかったりしていたなどのため、施設の利用実績が計画目標を超えていても、所得の向上、雇用の創出等の事業効果が十分に発現していないなどしていた。(指摘金額 14億7796万円)検査のポイントは次のように記載している。
2 検査の結果
(1)事業効果の発現状況について
ア 調査の方法
(イ)事業効果の判定方法
市町村長は、事業計画の策定に当たり、施設の整備による事業の目的を設定していた。そして、その目的は、同じ施設種別でも必ずしも一様ではないが、ほとんどの事業において、〔1〕雇用の創出、〔2〕所得の向上、〔3〕都市との交流人口の増加、〔4〕高齢者、女性等の活動の活発化、〔5〕特産品の加工・販売の促進、〔6〕遊休農地の活用のいずれか一つまたは複数を図ることとなっていた。
一方、報告書には、事業目標の達成状況を記載することになっているが、ほとんどの市町村で、事業目標の達成状況を測る基準として、施設の利用人数、販売額、加工実績等(以下「利用実績」という。)を用いていた。
しかし、直売所において店頭に陳列している商品のほとんどが地域の特産物でなく、地域外から仕入れたものであり、販売額が地域の所得の向上や特産品の販売の促進に必ずしも結びつかない場合など、施設の利用実績が事業計画に掲げられた数値目標(以下「計画目標」という。)を超えていても事業の効果が必ずしも発現していることにはならない事態も考えられる。そこで、本院において、表2のように、前記〔1〕から〔6〕の事業目的に応じた効果の指標(以下「評価指標」という。)を設定し、これにより施設ごとに6項目の効果の発現状況を調査することとした。
築いそ整備事業の計画策定に当たり、過去に整備した築いその実績漁獲量が把握できたのに、実績を反映していない漁獲増加見込量により計画漁獲量を算定するなどしていたため、事業による便益が過大に算定されていて、費用対効果分析が適切に実施されていなかった。(指摘金額 6億0580万円)この指摘のポイントは次の箇所である。
2 検査の結果……(1)計画漁獲量の基となる漁獲増加見込量に実績が反映されていないため、便益が過大に算定されているもの
事業実施計画における計画漁獲量と実績漁獲量の対比を試みたところ、ほとんどの事業主体では実績漁獲量を把握していなかった。このため、本院では、各種の統計資料を分析するとともに、事業主体等の協力を得て実施した漁業者に対するヒアリング調査等の結果を踏まえ、上記の1,115事業に係る実績漁獲量を調査し、計画漁獲量との対比を行った。
その結果、表1のとおり、277事業については実績漁獲量が計画漁獲量を上回っているものの、約半数の498事業については計画漁獲量の50%未満となっていた。
……12年度以降に実施する事業に係る費用対効果分析に当たっては、評価指針等に基づき、原則として実績による漁獲増加見込量を用いることとされている。しかし、これを採用していたものは311事業のうち、79事業にとどまっていた。そして、当該築いその事業実施計画策定以前に同一地域で整備した築いそにおける実績漁獲量の把握が困難であるとして、統一係数等による漁獲増加見込量を採用していたものが159事業、実施手引き等による漁獲増加見込量を採用していたものが73事業あった。…… (2)実態を反映していない魚価を採用するなどしているため、便益が過大に算定されているもの
しかし、上記の統一係数等による漁獲増加見込量や実施手引き等による漁獲増加見込量を採用していた232事業のうち、当該地域において初めて築いそを整備するなどした23事業を除く209事業では、同一地域において、同一の魚種等を対象とした築いそを過去に整備していることから、漁業者からのヒアリングを行うなどにより、実績漁獲量を把握し、これを事業実施計画に反映させることが可能であった。現に、一部の事業主体では、事業評価制度の導入に伴い、漁獲増加見込量について見直しを行い、実績による漁獲増加見込量を採用していた。評価指針等では、費用対効果分析に当たり、魚価についても、原則として直近の過去5年間の平均値を用いることとされているが、実態を反映していない魚価を用いるなどしていたため、311事業のうち14事業について便益が過大に算定されていた。そして、このうち8事業(事業費1億0925万円、国庫補助金5462万余円)については、便益が費用を下回っていた。
このように、附帯事業の予定実施時期が定められないまま一律のT係数により投資効率が算定されており、このため、国営事業各地区の事業全体の実施時期が経済効果の評価に的確に反映されることなく国営事業が着手され、……3 当局が講じた改善の処置
(イ) 上記の附帯事業の予定実施時期を、国営事業の事業計画の投資効率の算定に反映させ、一層的確な経済効果の評価を実施することとした。
……5 本院の所見
15年度に実施した事後評価についてみると、政策体系に基づき対象とする政策(施策目標)の評価113件、個々の公共事業の評価47件、終期を設定して実施した政策の評価5件となっており、特別措置については、政策体系に基づき対象とする政策の評価のうち2件において、目標を達成するための手段として、特例以外の特別措置が評価の対象となっていたが、特例は対象となっていなかった。
特別措置は、特定の政策目的を実現するための特別な手段であり、公平・中立・簡素という税制の基本理念の例外として設けられているものであり、また、厳しい財政状況の下で減収をもたらすものである。このような特別措置の性格にかんがみ、本院で特例について、その適用状況、検証状況及び課税の執行状況を検査したところである。
……
特例の検証状況については、税制改正の要望の際の検証では、厚生労働省は、同省で取得できた限られた既存の資料に基づいて政策効果等の検証を行って、特例存続の要望書を提出していたが、この検証には、減税見込額の算定などに課題等が見受けられた。そして、財務省は提出を受けたこの要望書等に基づいて検証を行っていた。また、政策評価による検証では、厚生労働省は特例を評価の対象とはしていなかった。
厚生労働省においては、特例の適用状況に関するデータの収集には難しい面があるなどするが、特例の検証について、より一層内容を充実することにより、政策の実効性を高めていくとともに国民に対する説明責任を果たしていくことが望まれる。財務省においては、厚生労働省をはじめ関係省庁に対して要望書における検証等について指導するなどとともに、特例をはじめ特別措置について今後とも十分に検証していくことが望まれる。
……
……4 本院の所見
この事前評価書においては、「産業再配置施策」として、本件補助金を含めて15の事業が掲げられており、そのほとんどの施策の達成時期及び中間評価は16年度、事後評価が17年度とされている。そして、本件補助金については、同評価書によると、誘導地域における工場の移転・新増設を促進し、生産・雇用の拡大を図ることを目標(「目指す結果」、「効果」)としていて、誘導企業数、誘致企業による雇用者数、補助金の交付件数などを指標として、今後、評価が行われることとなっている。
……
一方、経済産業省の地域経済施策については、地域の産業クラスターの強化といった地域経済の競争力強化に向けた施策に多額の予算が計上されている。そして、本件補助金を含めた産業再配置等の諸施策の実施については、政策評価基本計画に従い、成果の検証を行って、今後の予算に反映させるとしている。
したがって、過密と過疎の弊害を背景に創設された本件補助金について、関係各方面の意見等も踏まえつつ、本件補助金の有効性について十分検討するとともに、各種の施策・事業をより効率化・重点化する観点から、適切な評価を行い、今後の経済産業省における地域経済施策に反映させていくことが肝要である。