なお、本省は、本院の検査状況を踏まえた当面の措置として、18、19 両年度における報償費の予算執行を見合わせて、当該予算額の全額を不用とした。そして、本院の上記の検査結果並びに近年における社会情勢及び労働情勢の変化を踏まえて、19 年度限りで当該報償費の制度を廃止した。
素牛流通円滑化対策事業について、目的の達成状況や事業効果の把握に基づく見直しが十分でなかったことなどのため、家畜商における家畜流通の活性化が進み、肉用牛飼養規模が拡大するなど肉用牛預託事業が円滑に促進されていて、継続して実施する必要性が乏しくなっているのに、事業の廃止を含めた抜本的な見直しが行われていなかった。〔背景金額 5億0662万円 (平成18年度に交付した奨励金の額)〕その結果は、
上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省において事業の抜本的な見直しを行った結果、本事業に対する19年度の予算措置を行わず、19年3月に機構に対して本事業を除いた畜産業振興事業の実施を要請した。機構ではこの要請に基づき18年度末をもって本事業を廃止する処置を講じた。
ポストの美観保持作業協力謝礼金の支払制度について、作業の委託状況及び実施状況が低調なものとなっており、また、集配局の局員による清掃等で美観は十分維持できることから、謝礼金を支払って実施する必要性が認められないのに、美観保持作業の必要性について十分検討を行わなかったり、作業の導入後にその効果を検証していなかったりしていたため、制度の廃止を含めた見直しが行われていなかった。(1件 指摘金額 2億9105万円)その結果は、
上記についての本院の指摘に基づき、公社では、19年4月に各集配局に対して指示文書を発し、同年6月をもって本件謝礼金の支払制度を廃止することとする処置を講じた。
学校給食用食肉流通・消費改善対策事業について、牛肉の輸入自由化に伴い懸念された学校給食用輸入牛肉の価格の高騰は生じておらず、また、学校給食会等から給食実施校への輸入牛肉の供給量が減少し、給食用物資全体の供給量に占める輸入牛肉の割合も著しく低くなっているなど、学校給食を取り巻く環境が変化しているのに、検討が十分でなかったため、事業の終了を含めた抜本的な見直しが行われていなかった。(指摘金額 1億6560万円)その結果は、
上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、本事業を17年度末をもって終了することとし、18年5月に機構に対して基金の閉鎖を要請する旨の通知を発した。この要請に基づき、機構では、同年同月に要綱を廃止して基金を閉鎖し、基金の残額1億6560万余円を改善協会から機構に返還させた。
外国漁船により漁具被害を受けた漁業者への貸付けに対して利子補給を行うために国庫補助金等により造成された基金において、貸付けの実績が低調に推移し、その意義が著しく低くなっている中で、事業の廃止を含めた見直しの検討等が十分でなかったため、剰余金が累増し基金が有効に活用されないまま滞留していた。(指摘金額 2億8852万円)本文では次のように説明している。
2 検査の結果……3 当局が講じた改善の処置
このような状況にもかかわらず、基金事業を従来どおり継続することとし、交付した国庫補助金等をそのまま水産会に留め置くことは適切でなく、基金事業の廃止を含めた抜本的な処置を講じる必要があると認められた。
……上記についての本院の指摘に基づき、水産庁では、基金事業を終了することとし、平成14年9月に水産会から事業終了に伴う国庫補助金の返還申請を提出させ、同年10月に国庫補助金に係る残余財産計2億8852万余円(基本財産2億8610万余円、準備金3万余円及び運営資金238万余円)を水産会から国に返還させた。
産業再配置促進費補助金は、工業の集積の高い地域から低い地域への工場の移転等、工業の再配置を促進することなどを目的として交付されるもので、工業と地域社会との融和を図る上で一定の役割を果たしてきたと考えられる。一方、本件補助制度は、昭和48年度の発足以来30年が経過し、国土開発や工場立地をとり巻く環境は大きく変化している。これらを踏まえ、本件補助金の役割や成果を検証するとともに、工場立地等に対する企業や地方公共団体等の動向、工業再配置に係る各種施策のその後の状況等について検査した。本文の所見では次のように述べている。
検査したところ、本件補助金の交付実績は、平成14年度までの累計では1266億円となっているが、この間、昭和50年をピークとして減少傾向が続き、本件補助金以外の工業再配置関連施策はほぼ終了している状況となっている。また、新たな工業再配置計画は、前計画の終了後未だに策定されていない状況である。さらに、制度発足当初に比べ工場誘致に力を入れる地方公共団体が増加するなど、工業再配置に対する住民、企業、地方公共団体それぞれの意識や対応には変化がみられる状況となっている。
したがって、本件補助金は、関係各方面の意見等も踏まえつつ、その有効性について十分検討するとともに、各種の施策・事業をより効率化・重点化する観点から、適切な評価を行い、今後の経済産業省における地域経済施策に反映させていくことが肝要である。
4 本院の所見この補助金については、参議院決算委員会が、上記の報告が添付された15年度決算を審査した結果、15年度決算審査措置要求決議で取り上げて「財務省、経済産業省が十分に協議した上、促進費補助金を見直すべきである」とし、さらに内閣に対する警告決議の議決案に「政府は、移転促進地域からの除外を求める自治体があるなどの経済社会情勢の変化をも踏まえ、同補助金を見直すべきである。」と盛り込んでおり、この議決案は本会議で決議された。財務省も予算執行調査(17年度)で取り上げ、「本補助金については、廃止を含めた抜本的な見直しが必要。」とした。そして、18年度予算について財務省主計局が発表した「予算の質の向上・効率化努力」によると、「決算検査報告等の反映」として「17年度限りで廃止」したことが記載されている。
国土の均衡ある発展を図るための工業再配置に関する諸施策は、制度発足以来30年以上を経過し、経済のグローバル化に対応した企業の競争力強化の必要性、地方分権の進展に伴う地方の自主性の高まりや地域住民の意識の変化など、工場立地等を取り巻く環境は大きく変化している。
このような状況の中で、本件補助制度は、工業と地域社会との融和を図る上で一定の役割を果たしてきたと考えられる。
しかし、本件補助金の交付実績は昭和50年をピークとして減少傾向が続き、また、全国の工場立地の状況についても近年では減少傾向が続いている。そして、本件補助金以外の工業再配置関連施策のうち、移転計画の認定は近年実績がなく、また、立地基盤を整備する工業団地の造成施策は既に終了しているなどの状況となっている。また、これらの諸施策を含めて今後の工業再配置の長期的な方向付けを示す新たな工業再配置計画は、前計画の終了後未だに策定されていない状況である。さらに、制度発足当初に懸念された製造業に係る地域社会の公害等に関して、苦情件数については減少ないし横ばい傾向にある中で、制度発足当初に比べ工場誘致に力を入れる地方公共団体が増加するなど、工業再配置に対する住民、企業、地方公共団体それぞれの意識や対応には変化がみられる状況となっており、現在では「過密」と「過疎」という二つの観点のみで、地域が抱える問題が解決できない状況となっていることもうかがえる。
一方、経済産業省の地域経済施策については、地域の産業クラスターの強化といった地域経済の競争力強化に向けた施策に多額の予算が計上されている。そして、本件補助金を含めた産業再配置等の諸施策の実施については、政策評価基本計画に従い、成果の検証を行って、今後の予算に反映させるとしている。
したがって、過密と過疎の弊害を背景に創設された本件補助金について、関係各方面の意見等も踏まえつつ、本件補助金の有効性について十分検討するとともに、各種の施策・事業をより効率化・重点化する観点から、適切な評価を行い、今後の経済産業省における地域経済施策に反映させていくことが肝要である。